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「噂によると、結成20周年らしいですよ」

ラストに披露されることがここ最近の定番だった、希望にあふれた名曲「真昼の子供たち」で幕を開けたGRAPEVINEのデビュー16周年記念ライブ「LIVE IN TOKYO」@渋谷公会堂。「This town」を演奏後、ステージの上から田中和将(vo&g)がついでのようにそう言うと、場内から温かな笑い声と拍手と「おめでとう!」の声があがる。結成20年、メジャーデビューして今年で16年目。バンドが積み重ねて来た歳月と、彼らに影響を受けたバンドが今も後を絶たない状況を考えると、そろそろ大御所と呼ばれても何ら不思議はない。それなのに、GRAPEVINEというバンドはずっとこんな具合に、一見飄々と、だが確かにその音楽性とスタイルを進化させながら歩んできた。


GRAPEVINE
 砂埃舞う道を進むロードムービーを見るようなニュー・アルバム『愚かな者の語ること』からのナンバー「コヨーテ」の後に鳴り響いたのは、キーボードの高野勲がピアニカを手にした段階から誰もが内心興奮していたこと必至の懐かしくも意外な1曲「ポートレート」。しかもそんなファン心をなおも煽るように、その直前の「This town」ではしれっと、ギターソロの場面で西川弘剛(g)と田中がステージ前に立ち、対面しながら互いのギターを鳴り響かせるシーンまで披露。やっぱりこれって、”16周年記念のホール公演”ならではのバイン流サプライズ、ということか。

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 ホールならではといえば、「ホールでやる気合いの表れ」(本人談)という亀井亨(ds)のスパンコール付きのハットも印象的だったが、この日は光の演出も素晴らしかった。巨大なLEDスクリーンを使った大がかりな演出が当たり前の昨今、当日使われていた照明機器はほぼ、ステージの上下に放射線状に設置されたLEDのライトバーと、ステージ上のライトぐらい。にも関わらず、ステージ後方に垂らされたタペストリーに光が当たると土や木漏れ日のような影が現れ、「Sing」では真昼の開放感を思わせる光が場内を包み、金戸覚(b)の官能的なアップライトベースで始まる「411」では一気に妖しい青の底に引きずり込まれて行く。テクノロジーに頼らないシンプルな光のプロダクションが作り出す美しいそのドラマの数々は、ポストロックやドローンミュージックなどに触手を伸ばしつつも、シーンの流れやテクノロジーに惑わされず、緩やかに新陳代謝を重ねてきたバインの歩みそのもののようで、今も鮮やかに脳裏に焼き付いている。

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「ま、そんなとこですよ。今年の始めくらいにアルバムが出てますよ。11月と、12月もイベントをやるかもしれません。そんなわけでよいお年を(一同爆笑)。喋ることないんですよ(笑)」

 この日のハイライトともいえる「411」、ディスコめいたドラムパッドも鮮烈だった「Neo Burlesque」、「なしくずしの愛」と続いた濃密で圧倒的なゾーンに聞き入っていた観客の緊張をほぐすように、田中が言う。確か昨年のデビュー15周年のNHKホール公演は、15周年という節目の年に沿ったセットリストの妙もあり、メンバーも観客も半端ない気合いで臨んでいた気がする。だが今年は16周年。「Darlin' from hell」、これまた久々の披露となるロックンロール・チューン「ミスフライハイ」、「MISOGI」と、曲調も楽曲の年代も妙なナンバーを並べ、じわじわとボルテージを上げていくシーンなど、メンバーも観客も、通常のアルバム・ツアーでは味わえない世界を気負いなく楽しんでいたように思う。

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 本編のラストを飾ったのは、『愚かな者の語ること』のオープニング曲「無心の歌」。本編の最後にまさかの新作の冒頭曲を披露し、再び場内のテンションを上昇させる荒技に観客も再熱狂。さらにステージを去り際、西川がピックを鮮やかに客席へ投げ込んでみせる場面も。

 アンコールでは、「君を待つ間」の後に「豚の皿」という意外過ぎる曲順で、まさかの時事ネタ・アドリブまではさみ、鬼気迫る歌声と演奏を繰り広げる。そして「俺もピック投げていい?」と確認し、さきほどの西川に続き客席にピックを投げ込む田中。こんなサービスを見せつけられて客席の興奮が治まるわけはなく、当然のようにダブルアンコールへ突入。「アンコールさんきゅー。特別やでー。ほんまはそうでもないでー(笑)」という田中のMCの後、なんと、デビュー・ミニアルバム『覚醒』から「手のひらの上」を披露。最後の最後に16周年記念ライブらしいスペシャルな1曲を放り込んでくるという、GRAPEVINEらしいひねりも効いたホール公演。節目と言わず、ぜひ毎年恒例で見たいものである。

文:早川加奈子
 

ライブ情報

26 9月 GRAPEVINE 渋谷公会堂(東京都)